自分の家で家具達以外の誰かが帰りを待っていてくれる


とても素晴らしい事だと思っているんだが…。



「冷たい身体」


麦わら海賊団の手によって、撃破の上に追放された悪王ワポルの支配を今度こそ終えた旧ドラム王国。

サクラ王国と名を変えたこの国を統治するのは、かつてワポルに仕えし守備隊長、ドルトンだった。

国中の人々の信頼を一身に受けて彼は毎日を忙しく、そして充実した日々を送っている。


島にも夜が訪れて人々が岐路に付く頃、ドルトンもようやく自分の家を目指し始めた。

ほんの一週間前から彼の家は外装に全く雪を纏わないという、万年雪に閉ざされる冬島に似つかわしくない相を呈していた。

屋内はまるでサウナかと思わせる程に高温を保ち、屋根や窓、果ては壁まで熱を持っている。

原因はと言えば、彼の家にはたった一人の冷え性に悩まされる悪魔の実の能力者がいるからだ。



「また力を使っていたのか?」



玄関をくぐるなり襲い来る暖気の波に顔を顰めつつ、ドルトンは暖炉の前で縮こまっている少女に声を掛けた。



「寒かったんだから仕方ないじゃないですか…!」



家の中をこれだけ暑くしておいて、まだ寒いとはどの口が言うのだろうかとドルトンは苦笑する。

薄藤色の緩やかなウェーブヘアを揺らす少女の名は

グランドラインに点在する島を巡る旅人であり、アチアチの実を食べた発熱人間。

ドルトンは彼女に二度、助けられていた。

一度目は雪崩に飲まれた子供を助け出し、二度目は島を襲った海賊を…たった一人で殲滅した。

その後の何やかやで彼女は「旅人」の肩書きを捨て、「ドルトンの護衛者」という肩書きと同居権を得るに至る。



「力を使っても、君の体が暖まらなければ意味がないだろう」

「帰ってきたドルトンさんが寒がらなきゃ良いんです」




傍らに椅子を引いて座る家主を視界に認め、は膨れながら熱を発するのを止めた。

屋内を焦がす程の熱気は波が引くように消え、暖炉の炎が発する丁度良い暖かさが残る。

無尽蔵な熱量の引き替えとでも言うように、は体温が低い。

本人曰く「能力で出す熱量と、人間としての体温は別物だ」との事。

実際屋外で雪を溶かす程の熱量を発していても、10分と待たずに体の末端がかじかんで悲鳴を上げる始末だった。



控えめに伸ばされた男の大きくて武骨な手が、頬に触れてくる。

ついドルトンの手に自分の手を重ねて、猫が飼い主に甘える様に頬を摺り寄せた。

汗ばむほどの室温の中に居たより、一日中外に居たドルトンの手の方が暖かい。

触れ合った箇所からドルトンの体温がに奪われていく。

それでも彼は、自身の体温を少女に分け与えるように抱き寄せ、唇を合わせた。

冷え切ったたおやかな指を暖かな大きな手が絡め取り、ゆっくりと離れる唇は名残惜しそうに息を漏らす。

徐々に熱を上げる少女の身体は、まだ末端を暖めるには至らない。



「まだ…寒いか?」

「まだ手足はちょっと…」

「君を暖めるのは骨が折れるな」



不意にの力を使っているのだろう暖かい両手が、苦笑するドルトンの頬を包んだ。



「じゃあ私がドルトンさんを温めるから、ドルトンさんは私にその熱を返して下さい…?」



そう言って再び二人は、身体を温めるという大義名分の名の下に唇を重ねあう。

身を寄せ合うこの時間がずっと続けば良いとドルトンもも只願っていた。















あとがき
何でも本誌の方に氷結系能力者が居るとの事で、その内核熱系能力者も出てくるんだろうなぁと…
本誌と被らない内にとっとと出しておこうと登場しましたサクラ王国ヒロインですが如何だったでしょうか。
説明臭い文章ばかりで、甘い部分なんてこれっぽっちも…!orz
この人に関しては文中でもでた2つのエピソードがあるので、本人が忘れないうちに書き上げてしまいたいと…思いたい(;´Д`)