―彼女が彼を嫌いなわけ―
『が何時ラチェットの事を嫌いになったかぁ?そりゃお前、あの時以外に考えられないだろうなぁ』
興味津々な表情で身を乗り出すエップスに、腕のブレードを収めたサイドスワイプがその時の映像を映し出した
「っぬぐぉぉぉぉぉぅぅぅぅぅ…」
非常に野太い…野武士の様な呻き声が、静かなラボに転がった
私を呻かせている原因と言えば、女であれば長期間付き合っていかねばならない生理痛という厄介者だ
腹の中というか腸の中と言うか、とにかく体内の壁という壁を重機でこそがれている様なこの痛みたるや、掻き毟る事も出来ないもどかしさは歯痛に通じるものがあるかもしれない
私は困った事に結構重い部類に入るのだが、鎮痛剤を飲むのを好まないので毎月この痛みと死闘を繰り返していた
「、今日は一層フェロモンレベルが高いな。繁殖行為を望んでいるのか?」
「違うわよ…生理…。不要になった物を排出してんの……」
見当違いな推察を投げかけるラチェットに対し、答えるのも億劫げに起き上がった右手がふりふりと横に振れる
ベアリングやギアが唸る音が聞こえ、頭のすぐ近くでスンスンと鼻を鳴らす音がする
痛みで顰む顔を上げると、近すぎて若草色の装甲しか見えないラチェットの顔がすぐ目の前に有った
「……何よ。悶絶してる人間見て、オートボットの軍医様は楽しい訳…?」
「ウーマンオートボットは体内にスパークを宿す。そして時期が来ればそれを摘出し、任意のボディへ移し変える事で我々は生まれるのだ」
突然講釈を垂れ始めたラチェットに対して、テーブルに顎を載せたまま痛みで自然と悪くなる目付きをくれてやる
その目には言外に「オートボットの技術でどうにかならないのか」と言っている様だが、残念ながら軍医には伝わっていない様だ
「人間のジョセイと言う物は体内で一個の完全体を保有し、育成させ、排出する。これは尊敬に値する。何と素晴らしく完成された仕組みだろうか」
襲い来る激痛と鈍痛に再び突っ伏してしまったを他所に、ラチェットは興奮した様に言葉を続け、更に顔を近づけた
「、私のスパークを宿し「死ね変態!!!!!」
ラチェットのオネガイゴトを遮って炸裂したのは、の怒りとオートボットのカメラアイ目掛けて投げられたマイナスドライバーだった
オマケ
「正直俺はが何で怒ったかわかんねぇけど、ラチェットの奴を明らかにヘンタイって言い出したのはこの一件からだったな」
そう言いながら映像の投影を止めたサイドスワイプの前で、一連の映像を見たエップスが、頭痛を堪える様にこめかみを押さえて見せた
「……こりゃ仕方ねえわな。幾ら温厚なちゃんでもキレるわ」
「何だ人間にはの怒りの原因がわかるのか?教えてくれよ」
「まあ何だ、嫁入り前の女の子に言っちゃあいけねぇよな」
「ヨメイリマエノオンナノコって…なんだ?」