は怒らせるとオシオキが半端ない


それは全ボッツ間で常識となっている事柄だが



「今日のメンテはジョルトだからね、調整の要る武器なんかあったら30分後に一緒にラボに。あと違和感有るって言ってたボルトのチェックもしとこうか」


普段のはとても朗らかで優しくて、オートボットのメンテナンスにおいて右に出る人間は居ないのもまた事実だった



―噂は真実より奇なり―




「はいはいマッドフラップ、スキッズ。今日のメンテはジョルトって言ったでしょ。あんた達は3日後。火曜日。大人しく出て行きなさい」
「えーいいじゃねーかよーー!」
「そーそー、だって俺達調子わりーもんなー」

肩口に這う通電回路の動作確認をしている周りで喚くツインズに、とジョルトの不機嫌メーターが上がり始めていた
有事でなければオートボットの整備は曜日ごとに決められていて、変わる事など無い
それを知っていて尚、こう毎日毎日メンテの邪魔をされては此方も大人の対処をするしかなくなってしまう


「二人ともー、好い加減にしないと…」

持っていたインパクトドライバーを唸らせてにっこりと笑ってやる

「てめえらのケツに穴あけてションベン交じりのオイルぶちまけさせんぞ?」


不機嫌度をそのまま反映した脅し文句と黒い笑顔に、双子がブサイクな顔を一層歪めて慌てた様に顔の前で手を振る

「うおっ!まっ待てって!何もタダでって言ってる訳じゃねーじゃん!!」
「そっそーそー!またアイアンハイドのおもしろ話聞かせてやるからさー!!」


赤い方は人間で言う尻のパーツを隠す様に両手を背後に回し、内股になりながらも必死にの気を引こうと喋り続けるが、ドライバーは一層唸りを高くするだけだった














「おい、肩が軋んで敵わんのだどうにかし「ぎゃー!たぁすけぇてえええええ―――!!!」

ラボのシャッターが開いた途端、中に入ろうとしていたアイアンハイドの足元を掠め、ツインズが尻を押さえた妙な格好で割と本気で走り去っていった
暫しその後姿を見送った後ラボの中に視線を戻せば、其処には仁王立ちでドライバーを片手で弄ぶ

「どうしたの?何か不具合?」
「肩が軋むんだが…なんだ今のは」
「子供が大人の仕事の邪魔しに来たから追い返した所」

インパクトドライバーを肩に掛け唸らせてやると、彼も何があったかを察した様で軽く鼻を鳴らして歩を進める





「ごめんねジョルト。後はコンピューターでエラーチェックするだけだから、ハイド見てくる間寝ててくれる?」

ごめんねと両手で拝む様な仕草をするに軽く手を振り、早く行ってやれと親指でアイアンハイドを示す
ジョルトとしても、ここでゴネて後から「との密なる時間を邪魔する愚か者」と、アイアンハイドから弾丸をプレゼントされるのは御免被りたいのだ


は何度かジョルトを振り返りながらアイアンハイドの方へ脚を進めた

「もーアイアンハイド、あんたもあいつらのお師匠様だったら順番守るように言ってよー」
「……何だと?」

前置き無く投げつけられた言葉の内容を解析しかねて、無意識に人差し指を眉間に置いた

今、はあの双子が俺に師事していると言ったのか?

「…あの2体を弟子にとった覚えはないぞ」

俺に師事しているオートボットといえばサイドスワイプしかないのだから、嘘は言っていない

「あ、やっぱそうなんだ?見てると全然っぽくないからツインズの嘘だとは思ってたの」

そう言って目の前できゃらきゃら笑うを見下ろし、分かっているなら聞くなとは思ったが、それを言った所でがその辺を改めるとも思えない
そんな所も含めて「」と言う人間を好ましく思う自分に、御目出度いブレインサーキットだと苦笑しながら、不調を訴える肩を検査して貰う



「あー潤滑油が切れてるわね。オイルちゃんと飲んでる?」
「そう言えばスクランブルが多くて飲んでないな」

そんな事だろうとは思ったわ。とほんの少しのお小言と、黒い装甲を労わる様に撫でる手を貰うと、それだけで機体の軋みが消える気がする




「……ま、ハイドの面白い話は色々聞いてるけどね」
「…あいつら何を言った」
「さーて何でしょうねー」

大方下らないホラでもふいたのだろう事は想像に難くない
だがのこんな笑みが見られるなら、ツインズの戯言もいま少しは黙認してやっても良いかも知れないと思う





ああお前の手の 何て優しい事だろう


出来る事なら その手を永劫握っていてやりたい


そして 共に歩んでやりたいと思うのは 傲慢な事だろうか