昔から惚れっぽい、加えてイロモノ好きという自覚はあった
そして回りに胸張って自負する位、呆れる位、私の好みは王道を行かない
しかしまあ、何で寄りにもよって今回は
「危ない危ないどいてどいて其処どいて!ぶつかるぶつかるぶつかるぶつかっちゃう――――!!!」
私の横を掠めて壁に激突してる、自称「アタシャ頼れる男」なんだろう……
―恋に理由はいりません―
無闇矢鱈と自ら宣言して回ってる所為もあり、友人も私の好みが普通の人とは違うのを心得ている
心得ちゃあいるが今回ばかりは流石の友人も「無いわー」と言ってドン引きだし、かく言う自分だって何でブラーに一目惚れしちゃったのか定かじゃない
いっその事チャーさんとかスワーブとかグレイズとかスリングとか、選択肢だって色々有っただろうに…
因みに今まで自分が一目惚れした相手はホイルジャック、パーセプター、オメガスプリーム、モーターマスター、ラムジェット、ゴング、ビーチコンバー、etc…
この連なる名前を聞いて、私の無節操さを推し量って頂きたい
しかしながら自分の惚れっぽさは自覚してるので、告白する様なマネは一切していない
そんな自分の外道(そとみち)っぷり満載な趣味の回想を止め、キニナルアノヒトの安否を気遣って見る
「大…丈、夫?」
それにしても人型の穴開けるって…今時ギャグ漫画でも見ないよこんなの…
確かに何時も残像残すほどの勢いで動いてるブラーだが、物っつーか壁にぶつかるとは珍しい
穴の形に頭痛を覚えながら壁に開いた穴をひょいと覗き込むが、もう少し奥まで人型の穴が続いているだけでブラーの姿が無い
「あれ?居ない…よね?何で?」
ブラーならこんな穴から直ぐ様飛び出してきそうだから待ってみるが、一向に穴から出てこない…
自分でも何故か分からない位、急に不安に襲われて、穴の縁に手をかけ思いっきり中に身を乗り出しながら叫んだ
「ちょっと…一寸ブラー大丈夫?!つーか何処?!ねえ!!ブラー!!!居るの?!!返事して―――!!!」
「が心配してくれたの嬉しい嬉しい嬉しい!優しい優しい大好き大好き大好き大好き好き好き好き好き愛してるー!」
「に゛ゃああああああああああああ!!!!!!」
「ごめんねごめんね。その手痛いでしょ凄く痛いでしょ?私の所為でほんとにごめんね…」
視線の高さを合わせる様に体を縮こませたブラーが、これ以上にないほどしょぼくれた声で謝って来、心なしか何時もの早口もなりを潜めている
医務室前の廊下に設えられた長椅子に座る私の手首には白い包帯
穴を覗いてたらいきなり背後からブラーに飛びつかれ、その勢いで穴の中に倒れ込み、反射的に突っ張った両手首に痛みが走った
その痛みに堪らず呻いた私を、ブラーが血相変えていつも以上の速度で医務室に連行してくれて、今に至る
因みにあの時ブラーは、眼にも止まらぬ早さで穴から飛び出し私の様子を背後から見ていたらしい
何にせよ…トランスフォーマーなんてでかい物に圧し掛かられて、圧死させられなかっただけ運が良いと思うんだ私
「大丈夫よブラー。こんなの只の捻挫、すぐ治るからそんな顔しないでよ」
顔の横で軽く手首を振り、もう痛くないから気にしないでと笑いかける
だがそんな私を見下ろしてるブラーは…何と言うか、トランスフォーマーなりに泣きそうな顔をしていたのでこっちが申し訳なくなってしまう
「ほ、ほらブラーも仕事あるでしょ?こんな所で油売ってるとチャーさんに怒「行きたくない行きたくない!を一人にしたくないの傍に居たいの嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌!!」
一瞬何て言われたか分からなくて、返事が遅れたのが悪かった
「好き好き好き好き!私はが好きだから傍に居たいのずっと居たいの!私の気持ち分かって頂戴ねえねえねえ!」
ああもう何だろうこれ、これが巷で噂の絶叫告白って奴?
蒼いボディの早口野郎に抱き付かれながら、どこの世界の巷だと自分で自分の思考にツッコミを入れる
不意に彼お得意の早口が止んだので、何事かと首を傾けるとブラーと目が合った
黙って私を見下ろすブラーのカメラアイは、普段からは想像も付かない知的な光を宿していてドキリとさせられる
これは伊達に情報員を名乗り、頼りになる男を自称しているだけは有ると思わざるを得ない
ああそれにしても、もしかしてこれが「ギャップにヤラレた」って奴だろうか
多分ブラーのこんな表情を知ってるのは私だけだ
先刻あんだけ私の事好きだって言ってくれたんだから、それ位自惚れても良いよね?
私の返事を待って律儀に黙ったままのこの人に、キスの一つ位しても良いんだよね?
温度と硬さの違う唇が触れ合った数秒後、ジャイアントスイングみたいな勢いでぶん回された私は、ちょっとだけキスした事を後悔した
ブラーのしゃべり方が嘘過ぎてorz ちゃんと彼のしゃべり方理解したら、こっそり修正しときます