―無粋―

今日は12月24日、そう、世のカップル様や家族が浮かれに浮かれまくるキリスト教主の誕生日だ。が。
誰も居ない我が家で一人寂しく聖歌を歌ったりケーキを食べる位なら、日々お世話になってる工具達を労った方が有意義だと、閑散としたラボで一人手入れに勤しんでいた。


「そーいやボッツの皆さんもパーティするって言ってたっけ。他の行事と混ざってカオスな事になってなきゃ良いけど」


彼等は地球の情報を容易く得るが、どう足掻いた所で異文化の行事を行うのだから正しい理解で正しく執り行っているのか非常に気になる。

「折角の仲間内パーティだから飛び入るつもりは無いけど…もしサンタ姿のオプティマスとか居るなら見てみたいなぁ」

司令官のあらぬ姿を想像してニヤニヤしていると、突然ラボの入り口が開いた。


「…何してんの?おじさんはアナベルちゃんに添い寝してあげるんじゃなかったの?」

ズカズカと僅かな地響きさえ伴って、私の視界を右から左に通り過ぎていくアイアンハイドに声をかける。
私の記憶が確かならば、彼はレノックス家のクリスマスパーティに参加している筈だった。


「お姫さんはとっくに夢の中だったからな。後は夫婦水入らずだ」

だから帰ってきた。と短く付け足してハイドはどかりと廃材の積み込まれているコンテナに腰を下ろし、見事に動く気配が無い。
いや…あんたがこっちに居たら、レノックスさんの足が無くなるじゃない、それ位判れ!


「…ねえ、オートボッツのメンバーは第三格納ゲートの方でパーティしてるそうよ、行かないの?」

「浮ついた祭など好かん。そういうお前は何故此処に居る」

「これが私のパーティ。て言うか折角の国民的安息日、この子等を私が労ってあげなきゃ誰が労ってあげんの!」

お気に入りのトルクレンチをズイッとハイドの方に差し向けて、握り拳で力説する私を黒いオッサンは黙って見下ろしている。
その「何言ってんだコイツ」的視線以外のツッコミを待ってみたが、来そうに無いので私はしょうがなく手入れを再開した。


静かなラボの中には機体から漏れる駆動音と工具が触れ合う金属音だけが響き、沈黙の合間にハイドはちろりとを見る。
数秒後困った様に、だがどこか楽しげにアイアンハイドは小さくロボット式に鼻を鳴らした。


―全く、工具の手入れとなると俺さえ目に入らんなこいつは―


傍らの自分には目もくれず、無心に工具や機材を磨くの表情はとても楽しげであり、まるで聖母の様な慈しみと優しさに溢れていた。
身寄りの無いは工具やオートボットなどの『人外』の物達を命有る物の様に…それこそ人間の様に大事にしている。
その様は現実と非現実の区別がつかないダメ人間と言えなくもないが、そもそもはバスタオル一枚と言う軽装でロボ命救助の為に氷点下のラボに長時間身を置いた人物。
アイアンハイドは最早「コイツはそういう人間だ」と言う認識に到って言及も放棄している。と言うか其処まで命を張ってくれた相手に問答も無粋と言う物だろう。



―無粋も何も、今や自分がという人間に…これほど執着してしまっているのも、今更な話だ―



「……どうしたの?ブレインサーキットが老朽化してボケた?」

黙り込んでいた自分を気遣う様な視線に気がつくと、無意識に右腕の銃砲を撫ぜた。

「…カノンの出力が最近不安定だ。手抜き整備をしてるんじゃなかろうな?」

「んっな?!言うに事欠いて、手抜きですってぇ!??」

ボソッと呟かれた内容に最大級の心外だと言う声を張り上げてから、は愛用のスパナをアイアンハイドに突きつける。

「えーそれではこれより年末大メンテナンス大会をおっぱじめます!泣いて謝っても止めませんのでご了承下さいませ!!」



所詮私達には賛美歌も、キャンドルも、七面鳥の丸焼きも、まして恋人同士の甘い囁きなど似合いもしない


似合うのはオイルの匂いとかドライバーの音とかそう言うのだ。むしろそれでも上等と言った所か?


両親が死んだあの日から、神様とかサンタクロースなんて信じてなかったけど、今なら信じてみてもいいかなと思う


だって一緒に居たいと思ってたけど諦めてたハイドを、今夜私の所に連れてきてくれたんだから


目の前のアイアンハイドに気づかれないように、私はこっそりとサンタさんにお礼を言ってからツナギの袖をまくった






オマケ

「………………完全に出るタイミングを逃したなラチェット」
「うむ、真逆アイアンハイドが戻ってきているとは予想していなかったぞ」
ラボのドアの外ではぎゅうぎゅう詰めになり、手にはボトルやケーキ、プレゼントの箱などを持ったロボット達が中を窺っていた。

待てども待てどもパーティに合流してこないを迎えに来たは良いが、ラボ内の雰囲気に出て行きづらくなってしまっていた

「くっそー…師匠、と良い雰囲気じゃねぇかよ。出て行き辛ぇな…」
「おいおい待てよオプティマス!俺らだっての「家族」なんだろ?!」
「じゃあ家族でクリスマスにパーッとやったっておかしくねーじゃんかよー!」
「あっ!待ちなさいよスキッズ!マッドフラップ!!」
「いえーいー!!トリック・オア・ハッピーニューイヤ――――!!!!」
「イキナリ何事!てかなんか混じってるんだけどー!!!!!!」
「…チッ」
「ハイドはハイドで何その舌打ち!!!」













2009年クリスマスシリーズ第一弾