「はい全員しゅーごーう!!」

ラボに入るなりは大声を張り上げ、ひしめくオートボッツの視線を独り占めする。
手にはブラシ、雑巾、スポンジなど明らかに掃除目的の道具で溢れるバケツを持って。

「さあ今日は全っ員!綺麗にするわよー。塩カル!砂埃!タール!その他!落として防錆防腐コーティングかけて綺麗になんなさい!」
「訓練したら一発でダメになるだろうが」
「あ゛?」




―愛憎裏表―





風呂嫌いのアイアンハイドが盛らした一言にが笑顔で鈍い声を出し、周りの面々に緊張が走った。

「アイアンハイド…後でメインゲートに来なさいね?何にせよ、全員洗うわよ?良いわね?」

どこか薄ら寒ささえ覚える笑顔を貼り付けたまま、有無を言わさずオートボット全員の洗車もとい、行水が敢行される事となる。
正直な事を言えばオートボットはボディの表面を特殊なコーティング状のバリアが覆っており、汚れる事などないので洗おうなどと「やるだけ無駄な事」
だが誰も彼女に異を唱えず、言われるがままになっている。



理由は簡単。



彼女に逆らったオートボットは、必ず手酷い目に遭わされるから。
その手口たるや陰湿にして残忍と言わざるを得ない。

最初に餌食となったラチェットは、仮にも四輪駆動車に擬態するにも係わらず二輪車用のオイルを入れられ、一週間は全身の軋みと胸の不快感に悩まされた。
彼らに自動車と全く同じ燃焼機関が搭載されていたら、今頃ラチェットは再起不能になっていたかも知れない。

サイドスワイプに到っては。車輪を固定するボルトが全てひっこぬかれているのに気付かず、変形したら関節があらぬ方向を向いたり四肢がもげかけた事も。
と言うか、実際足部に来る筈のタイヤが骨格から飛んで逃げてしまい、盛大にすっ転んだ記憶は今でも彼を慄かせる。

の魔の手はオートボットの誇り高き司令官、オプティマスもにも及んだ事があった。
彼はエンジンの様な機関にあるスパークプラグの様な発火装置を抜かれ、異音、出力不足、カーボンに悩まされた程で、彼女の報復は相手を選ばない。

オートボットの間ではに逆らうなという合い言葉すら有る程、彼女を怒らす事はタブー視されている。
そんな中、一番の被害に遭っているのは自分の意見を変えないアイアンハイドと、素で言う事を聞かないツインズだ。


行水も終わり綺麗になった所で、今日も今日とてお揃いのピンクボディをした片割れが、ラボに入るなり司令官目指して口々に叫ぶ。

「聞いてくれよオプティマス!俺昨日にブレーキ線切られてたんだぜ!」

下手すりゃ谷底行きだったー!と喚き散らすスキッズを宥めるラチェットは、最早その宥め方も堂に入ってしまっている。
賑やかなツインズの様子を横目に見ながら、くっと口の端を持ち上げたアイアンハイドをマッドフラップは見逃さなかった。
よくこんな酷い目に遭ってもに逆らうよな。と、皮肉混じりのマッドフラップの言葉を受け、黒い巨人は誇るように鼻を鳴らす。

「お前がいずれそうなる運命だったからだろう」

なんだとう!?といきり立つマッドフラップをオプティマスが宥め、どういう事だと視線で尋ねた。

「知らんのか?あいつは俺達の悪くなった部分にしか悪さをせん。メンテナンスの延長だと思えば腹もたたんだろう」

やり方に問題があるのは認めるがな。と言葉を残し、アイアンハイドはどこか楽しげにドアの外へと姿を消す。
残された面々はみな一様に女装したメガトロンでも見る様な表情でそれを見送るしか無かった。





オマケ

「さぁ〜〜〜てアイアンハイドぉ?覚悟は良いかしらぁぁああああん?」

聞いた者が一様に背筋を凍らせんばかりの、妙に楽しげなの声が彼の聴覚センサーを擽り、それに答える様に一つ、鼻を鳴らす。

「手柔らかに頼むぞ、お前は何時も加減を知らん」

言葉はぶっきら棒だが語調は柔らかなアイアンハイドの言葉には口元を柔らかく緩める





―可愛い人  手加減なんて  して貰えないのを分かってる癖に―





噛み殺した呟きを嚥下して、黒いオートボットをゆるりと手招き





―さあ  今日はあなたの何処を  コワシてあげようかしら―



大人しく台の上で仰向けになるその姿を眺めて、そっとその装甲に手を這わす



―コワシたら 私の手で もっとヨクしてあげるから―