思春期の若者らしく着々と関係を深めていくサムとミカエラは、最近二人だけで会う事に余念が無い。
そして体の良い「お留守番役」を言い遣ったバンブルビーは、決まってある少女の下へと馳せ参じる。
少女の名はと言い、キューブを巡る戦いに偶然巻き込まれ、市街戦で戦い抜いた戦友であると同時に、バンブルビーの密かな想い人だ。
親友に倣ったかは不明だが、彼らに負けない程バンブルビーはとの逢瀬を重ねていた。
軍人の娘である彼女はそこらのミリタリーオタクよりも知識と銃火器の扱いに優れているが、そんな話をバンブルビーと交わした事は無い。
バンブルビーにとって地球の武器の話など、現代人に原始時代の石器の話をするのと同じ位ナンセンスな事だと知っているからだ。
その代わりにインターネットでも載ってない様な地球の事を色々と話してやる。
時折バンブルビーのカーステから流れる曲を歌ったり踊ったりと、その様子は人間同士のデートと全く変わりない。
今日もバンブルビーはの元へ参上し他愛の無い会話が交わされるが、終始の表情が浮かないのが気になっていた。
堪らなくなって背を屈しての顔を覗き込む。
「ねえバンブルビー、あなた達の生命源のキューブはなくなっちゃったのよね。いずれ…動かなくなっちゃう日がくるの?」
俯いたままのの口から、か細い声が漏れた。
トランスフォーマーは人間が及びの付かない長い時間を動いていられるが、キューブから得うるスパークとて無限ではない。
消耗しすぎた時は何らかの形でエネルギーを補わなければ何れスパークはその燈を消すだろう。
彼らとて「死」という機能停止と無縁な存在ではないのだ。
眼前の小さな人間を見つめながら黄色いオートボットは首を横に振りかけて…静かに縦に振る。
「じゃあ何か代わりの物で補えたりしないの?」
見上げ、縋る様な声にバンブルビーは少し考え込むように俯いた。
『白雪姫は王子様のくちづけで目覚めるのです』
「は?」
突如バンブルビーのカーステから流れだしたファンシーすぎる音声に思わず眉間に皺が寄った。
それからもバンブルビーは幾つか童話のナレーションを流すが、聞かされているとしてはエネルギー問題と姫君達の感動のフィナーレの関連性を図り切れず頭を抱えるしかない。
伝えたい事が伝わらずこちらも腕を組んで首を傾げてしまっているバンブルビーは、はっと思い出したような仕草をすると自分の体を見下ろす。
金属で出来た体から、音量は小さいが高い周波数の音が漏れていて、何かを探している様だとは思った。
『キューブは失われたが代替エネルギーを摂取する事は可能と考えられる』
カーラジオから聞こえてきたのは、変態軍医ことラチェットの声だ。
『私が調べた所、我らよりも数年先にこの星に確認されたオートボットは絆で結ばれた、若しくは情を向け合う人間と口付けをする事で身体能力や武器をバーストアップさせる者がいたらしい』
『それは我々オートボットと人間が口唇を重ねることにより、何らかの原動力を供給されたと考えられる、と言う事か』
『ああ。それを踏まえ我々が同じ行動を行なった場合、何らかの作用が期待出来るのではないかと思われるのだ』
『相手が人間でなければならんのか、オートボット同士でも可能なのか、はてまた何でも良いのかってな検証が必要になるな』
『よし、ではてっとり早くこの場にいるものでオートボット同士の検証を始めるか』
変態軍医の不穏な提案後、一瞬で場がカオスと化したのが録音音声から伺い知れる。
とりあえず、何やら真っ先に標的にされたっぽいオプティマスには心の中で合掌しとく事にする。
「あはは・・・何かオートボットが野に放たれた獣みたいね・・・。バンブルビーはこの検証に参加したの?」
黄色い戦友はフルフルと首を横に振り、の胸に指を置いた。
『私にとってみんな大事で好きな人よ。でもあなたに対するこの感情は特別なの』
どこを探して見つけた音声なのか、B級恋愛ドラマですら風化した言い回しをするバンブルビーに思わず吹き出さずにはいられなかった
正直キスなんていう直接触、それも自分が一番好きな相手などと人間臭い条件が代替エネルギー摂取にどう貢献するかさっぱり理解できない
だがバンブルビーがそれで少しでも元気になるなら・・・鉄錆味のキスも悪くない
静かに、愛しさを込め互いの唇が重ねられた
オマケ
検証と言う名の祭りを終えたオペレーションルームでは、黄緑色の軍医が基盤のキーを叩きながらくつくつと喉を鳴らし怪しく笑っていた。
バンブルビーの一番好きなものと言う条件なら、まず間違いなくオプティマスかサムを選ぶ筈だ。
どちらが選ばれようがオプティマスは腑抜けになる。
そうすればいかなアイアンハイドと言えども旧友に愛想を尽かす筈。
其処へ私が颯爽とアイアンハイドの手をとり・・・などと姦計を巡らしていたラチェットの後頭部から不意に銃の激鉄を起こすような音と、鉄が急激に熱される音が響いた
「ラチェット貴様…。まだ性凝りもなくオプティマスを狙ってやがるのか?久々にカノンから溶鉄出したい気分だぜ?あ”?」
「あ、アイアンハイド落ち着けそれは誤解だといつも「ダチに手を出そうとする奴はゆるさん」
直後軍医の後頭部には熱々のトリモチが盛大にぶちまけられ、アイアンハイドと入れ代わりでオペレーションルームに入ってきたエップスに室内の惨状に笑い倒されていた
そして後に、口唇接触で強化されるオートボットの話にも若干の虚言が混じっていた事を追及され二度目のトリモチを喰らう羽目になっていた
注・キスプレの設定を元にしてますが、条件付けが異なってるのはラチェがわざと嘘の条件を提示しただけです。