私はイタリアの片田舎から、進学の為にこのボストンまで出てきたしがない学生
最初何気なく足を踏み入れたパスタ屋さんだったが、味が良かったのとオーナーのアガサさんがとても良い人で、今では顔を覚えられる程通い倒していた
(と言うか、留学生だからと財布の中身を思い遣ってか安く食べさせてくれるからとも言えるが)
―空の旅はいかが?―
「あーちゃん悪いねえ、そのスパゲティをモンタナに持って行ってやってくれないかい?」
モンタナ? ああ良くアガサさんに怒られてる黄色い毛並みの人か。よくお店の裏手で飛行機の下に潜ってるんだよね
良いですよーと本を閉じながら笑顔で返事すると、アガサさんも笑顔でパスタの盛られた皿を載せたトレーを渡してくれた
勝手知ったる他人の家と言った風情で裏口をくぐって裏のポートへ出ると、今日も元気に飛行機の下から生えた脚が見えた
「スパゲティ持ってきましたよーモンタナさーん」
「おうアルフレッドかー、いっつもすまねウォア!!」
私の声に反応して飛行機の下から出てきたモンタナさんは、案の定見慣れない人物に工具を放り上げてびっくりした
・・・あ、落ちてきた工具が頭の上に…痛そう…
「良くお店の窓から整備してる所、見てましたから」
デッキに椅子を持ち出し、パスタをかき込むモンタナのコブに濡らしたタオルをあてながら他愛の無い会話が続いていた
この人は年甲斐も無い、と言ったらかなり失礼ではあるが、うだつはあがらないが冒険心が強く、まるで子供の様
アガサさんやアルフレッドさん、チャダさんから聞く話は間違ってなかった様だ
ふとケティの傍に散らばる工具、そしてケティ本体を交互に見やり「運転するんですか」と尋ねて見た
「我がモンタナ空港は安心安全をモットーに、快適な旅を提供するぜぃ!」
得意げに親指まで立てて、モンタナさんがニカッと笑いかける
飛行機は嫌いじゃない、むしろ見るのも乗るのも好きと言って良い
だが近くに置いてあった料金のパンフレットを見て、無残にも打ち砕かれた夢が足元に散らばった気がした
バイトを掛け持ちしてやっと、学費と生活費がカツカツ程度にまで持っていけている現状、とてもではないが払える様な金額ではなかった
あからさまな落胆を見せるに、流石のモンタナも察したのか機内に気まずい沈黙が流れた
「そういやぁ」
沈黙を破ったのはモンタナだった
「ここん所ケティも運動不足だし、そろそろ慣らしで飛んでやらねえとなぁ〜」
何を言い出すのかと思って、私はついモンタナさんの方を見る
「たかがその辺一回りするだけだけど、今なら助手席があいてんだけどなぁ〜」
「のっ!乗せて下さい!!てか乗りたいです!!」
思わず右手を挙手して起立までした自分に気が付いて顔を赤くするが、目が合ったモンタナはニカッと笑っての手を引く
「いよぉーし!モンタナ航空特別貸切便、しゅっぱあーつ!!」