「も、もうお兄ちゃんたちやめてよぉ!!」

末弟セイバーの必死の哀願も、殺意漲らせた赤い長男と黒い次男には最早届く事は無かった




―兄弟ゲンカにしては―




事の起こりと言えば、ブラッカーがラスターの発明品を壊した事に始まる

壊した。とだけ言えばまだ事態は深刻ではなかろうが、ブラッカーの手によって壊された発明品の数が、今回で3千個目となれば話は別だった

しかも壊した張本人の謝る態度が全く悪びれた物でなかった為、ラスターが2999回の我慢の末、遂に堪忍袋の尾を引き千切った(勿論TFにそんな物は無いのだが)のである


「あーあ。兄貴が幾らメモリーサーキットが弱くて物覚えが悪いからって、少なくとも壊した回数10回位までは覚えてて欲しかったなあ」

「…おいラスター、幾ら兄弟だからって言って良い事と悪い事位分かんだろ?」

「はっはーん?脳筋(脳みそまで筋肉)兄貴に、他人の言葉に傷つく様な繊細さがあったとは知らなかったなー、こりゃ失礼?」


売り言葉に買い言葉とはこの事

二人の機体温度は上がっているのに、場の空気が徐々に温度を下げていくのが幼いセイバーにすら感じられた


「ブラッカーお兄ちゃ…」

「セイバー止めろ、巻き込まれるぞ。どう見たってブラッカー兄さんが悪いんだから手は出しちゃいけない」

「でもぉ…!」

「ラスター兄さんだって本気でブラッカー兄さんを壊そうなんて思ってないから大丈夫。さ、危ないから部屋に行こう?」

今にも泣き出さんばかりの表情のセイバーは、ブレイバーに手を引かれ渋々と言った風に部屋を出た
















「っらぁああああ!!…あがっ!!」

短い悲鳴とともに部屋の中に響いたのは、ラスターに投げられたブラッカーが壁にめり込んだ音である

続いて「ずず…」とか「ずしんっ」と言う、割と重たい音が響いたのだが、何の音かは言わずもがな


「…っちぃ!やるなラスター!」

体を起こしたブラッカーが、口端から流れるオイルを乱雑に拭った



グチャグチャになった室内に反して、双方剣で無く素手で対峙している辺りが、まだ辛うじて事態を「兄弟ゲンカ」の枠に収めていた



ブラッカーが正拳突きを打てば、ラスターは相手の腕に添う様に体を半回転させた勢いごと背負い投げる

赤い機体が綺麗な弧を描き、勢い良く打ち付けた背中から胸に衝撃が突き抜けて、機体の制御が阻害されてモニターにノイズが走る


よろけながら起き上がる長男からフックが飛んでくれば、次男は身を屈めて懐に入り、強烈な肘打ちを腹部、更に掌底打を顎に放つ

衝撃によって装甲の下でケーブが2、3本千切れて液漏れを起こし、作動を完全に狂わされたオプティックセンサーがチカチカと明滅した

それでも諦めずにブラッカーは下段蹴りを放つが、軽く脛で後方へ受け流され、掴れた腕を引っ張られて防御が崩れた所へ遠慮の無い膝蹴りが襲い掛かる




力のブレインマスターであるブラッカーは、力で相手を制す事を何より得意とするが、技のブレインマスターであるラスターは、相手の力を利用して制す事を得意とする

ブラッカーが力で押せば押すほどラスターはそれをいなし、逸らし、絡め、すくい上げ、打ち払い、倍返しを見舞う

地球には「柔能く剛を制す」と言う言葉があるが、これは都合3度ほど取っ組み合いを演じ、全敗の長男と全勝の次男の力関係を表すのに最も適した言葉だと言えた




立ち回りの最中に瓦礫を踏んでよろけた拍子に、ブラッカーに顔の横にあるインテークを掴れ、床に押し付けられた

更に圧し掛かろうとする兄の左手を裏拳で打ち弾き、バランスを崩してつんのめって来た所へ渾身のヘッドバットを見舞ってやる

堪らず鼻を押さえて仰け反ったブラッカーの下から抜け出し、駄目押しとばかりに顔面を蹴り、更に足を首に引っ掛けて床に叩き付ければ衝撃で床が変形した


度重なる打撃にブラッカーのブレインサーキットはまともに機能せず、ケーブルのあちこちが断線した肢体は、動かすこともままならない

呻き声を上げる事しか出来ないブラッカーの機体を抱え上げて、ラスターはそっとブラッカーをテーブルの上に横たえる

そのまま腕に手錠の様な物がはめられ、それから伸びる鎖の先にある四角い基盤の様な物が床に勢い良く張り付いて、ブラッカーを磔にした



「まだ試作段階だけど、大型戦士クラスの力でも壊せない様に作った手錠。兄貴にゃ取れないよ」




「あ、さて?」

片腕を絡め取られて身動ぎしているブラッカーの右腕を、妙に機嫌の良さそうな声のラスターが取り上げる



「俺の可愛い発明品達を、3千回も粉々にしてくれた悪い手はこれかあああああ?!」

「ッッッぃぃでででででえええええええ!!!止めろラスター!!マジ痛ぇ折れる!!頼む止めてくれ!!!」


テーブルの上で腕拉ぎ十字固めを掛けられたブラッカーは、その痛みに最早長男の矜持なんぞかなぐり捨て、脚をバタつかせながら力の限り叫ぶ


「今まで俺が止めてくれっつって頼んで、止めた験しがなかったよな兄貴はなあ?そんな兄貴の頼みなんざ、聞く義理ないよなああ?」


取り付く島も無いラスターが、ヘッドパーツが床に付くほど機体を反らせると、ブラッカーの右腕のジョイントと言うジョイントが正規とは真逆の方へ強引に曲げられ、ミシミシと嫌な音を立て始める

次第に軋み音は、鈍い痛みを伴って金属が無理やり裂かれる様な音へ変わり、裂断したボルトが機体の外へ爆ぜ飛ぶ





集積回路を貫く様な痛みの最中、不意にラスターの手元で鋭い光が翻り、ブラッカーの胸のハッチが勢い良く開いた

ハッチの中にはブレインマスターの分身であるブレイン体が静かに目を閉じて横たわっていた


「おいラスター!イキナリ何「兄貴知ってるか?ブレイン体は本体である俺達と感覚がリンクしてるから」


ブラッカーが止めるより早くラスターの手が、ブレイン体の脚の付け根…受容器の蓋を軽く擦った


「っぅ…!」


途端、ブラッカーの口から押し殺した声が漏れ、赤い機体がビクンと跳ねる


「こう言うヤり方も有りなんだぜ?」

今までの痛みとは違う感覚が体に走り、その発信源を悟ったブラッカーが狼狽した様に視線を巡らす

「っやめろラスター!セイバーが…!」

「セイバーは俺達がケンカおっぱじめた時点で、ブレイバーが部屋に連れてってるよ」






「だから安心して喘ぎ声でも何でも出せよ、ブラッカー」

























…幾ら前触れ無く下品な発言が飛び出る我サイトとて、一応全年齢対象をうたってるからには
これ以上日の当たる場所ではイケナイと天啓が下りましたので、止めました(笑)